今月は、最近話題になっている映画について私なりに深掘りしていきたいと思います。
その映画は『PERFECT DAYS』です。
主演の役所広司さんが、第76回カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞されたことで注目を集めました。
私は役所広司さんの大ファンです。今までも役所さんの映画はほとんど見ています。善人も悪人も、どんな役でもこなす、素晴らしい演技力です。
まずは、『PERFECT DAYS』のあらすじをご紹介します。
東京でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は静かに淡々とした日々を過ごしています。
毎日同じ時間に、目覚め同じルーティンで支度をして仕事に出かける。
公共トイレの清掃の仕事を、手を抜くことなくこなしていく。
仕事が終わったら、いつも同じ店に行き、寝る前に文庫本を読み眠りにつく。
判で押したような同じ繰り返しの毎日を過ごしています。
映画は淡々と流れます。平山が毎日気持ち良いほど同じ時間に同じ行動を繰り返します。
でも、そんな平穏な日々がおびやかされることが出てきます。
そもそも平山は、なぜトイレ清掃員をしているのか? 以前は、エリートサラリーマンだったのではないか?という疑問も湧いてきます。
「ここで過去の告白があるのでは?」と思うシーンもありましたが、見事に裏切られます。
平山の過去は全くわからないまま、エンディングを迎えます。
映画は本当に淡々と、特別盛り上げるところもなく進んでいきます。
「なぜこんなに海外で評価されているの?」
と思う日本人は多いでしょう。
私も、見た直後はそう思いました。でもよくよく考えてみました。
あの、毎日同じことを確実にこなしていくことや、公共のトイレを隅々まで完璧に清掃する姿は、日本ではそんなに違和感がないかもしれませんが、海外の人にしてみれば「すごいこと」なのかもしれません。
そして、思いました。
誰にも乱されない生活って、とても幸せなことなのかもしれない。
現代人は、さまざまな制約の中で窮屈な生活を強いられています。
平山も、生活が乱されていないときは、とても幸せな表情をしています。
でも、同僚の急な退職でその生活が乱されて、平山が怒り心頭になるシーンがあります。今までの無口な平山が豹変するのです。
私たちは、毎日が同じでつまらない・・・と思いがちですが、毎日同じ生活ができることが一番幸せなのかもしれません。
平山は決してお金持ちには見えません。でも毎日のルーティンをこなしている彼の表情はとても穏やかで、見ているこちらも幸せでいられました。
毎日、仕事終わりに銭湯に入り、疲れをいやす。毎日夕飯は同じ店に行く。
お店の人からは「おかえり」と声をかけられて、何も言わなくても同じメニューが運ばれてきて、お酒を美味しそうに飲む姿もほほえましい。
「PERFECT DAYS」であることが、人間の本当の幸せなのかもしれません。
そして、日本人の素晴らしさも改めて感じることができる映画だと思います。
ぜひご覧ください。